魔法のレッスンの秘密3「効率良く、効果の高い練習法-グループ分け」

渡部 由記子「魔法のレッスン」のもう一つの秘密は、「効率良く」「効果の高い」練習法を行うことにあります。

ピティナ・ピアノコンペティションをはじめ、コンクールや音高・音大などの入試、はたまたピアノの発表会に至るまで、曲が決まってから本番で演奏するまで、限られた時間しか無いのがふつうです。

そこでなるべく効率が良く、効果の高い練習を行うことが、とても大切になります。

その一つが、「グループ分け」により、同じ音を省いた楽譜を作ることです。詳細は拙著渡部由記子メソッド1 魔法のピアノレッスン「楽曲指導実践編」~魔法のノートの作り方~でご説明しています。ここでは、本書に掲載してある「バイエル第78番」を例にとってお話しします。

「バイエル第78番」は、全体で24小節の曲です。ですが、多くのピアノ曲同様、「78番」も似たようなフレーズが何度か出現します。そこで、同じフレーズについては、初出のフレーズのみ練習することにして、2度目以降は練習を省略します。渡部由記子メソッド1 魔法のピアノレッスン「楽曲指導実践編」~魔法のノートの作り方~ 5ページ)

そうすると、右手で練習すべきフレーズは12小節、左手はたったの6小節になります。つまり、右手は全体の1/2、左手は1/4だけ練習して、マスターすれば、楽譜をひととおりマスターしたことになるのです。つまり、練習にかかる時間を、大幅に短縮できることになります。

その分、この12小節(右)、6小節(左)には、丹念に取り組みます。「魔法のレッスンの秘密2」でご説明した「指の指定席」も含め、丁寧に練習するのです。つまり、同じ練習時間を費やしても、このやり方のほうがずっとクォリティが高くなるのです。丹念な取組みについては、いずれこのコーナーでご説明さしあげます。

12小節と6小節を抜き出した練習は片手ずつになりますが、片手ずつがマスターできたら、両手奏に入る際も、グループ分けをして練習します。「バイエル78番」であれば、4つのグループに分けます(同書9ページ)。

具体的なことは本書をご覧いただいた方が分かりやすいですが、グループ分けでは、Aグループ2小節、Bグループ2小節、Cグループ5小節、Dグループ3小節の、合計12小節を練習します。大ざっぱな言い方になりますが、24小節の曲を、12小節分の練習でマスターすることができるのです。

曲に取組み始めたばかりの段階で、このように楽譜を最小単位の要素に分けて練習することで、大幅に時間を節約できます。

また、より音楽的な表現を深く追求する段階になっても、「何十小節、何百小節もある大曲をマスターしないといけない」と考えるよりも、「この小節と、この小節は、似ている(同じ)なので省くことができる。全体としてはもっと少ない小節数をマスターすれば良いのだ」と思えるのでは、精神的にも余裕が生まれます。その分、限られた小節数を、より深く追求できるようになるのです。

なお、本書には「バイエル第78番」をはじめ、7曲が収録されています。どの曲も、「同じ音を省いた楽譜」をはじめ、渡部 由記子の「魔法のレッスンの秘密」を活用した練習方法が掲載されています。

収録曲:バイエル「第78番」、ブルグミュラー「アラベスク」、G. ペツォルト(J.S. バッハ)「メヌエット ト長調」、L. モーツァルト「アングレース」、ブルグミュラー「貴婦人の乗馬」、クレメンティ「ソナチネ 第1楽章」、ベートーベン「エリーゼのために」