一般大卒の私が、特別指導者賞を受賞するまで (2)

2019年のピティナ・ピアノコンペティションで、生徒さんが金賞を受賞なさり、ご自身も特別指導者賞を受賞なさった、愛知県の大神薫先生からいただいた体験談の2回目です。(前回分はこちらをご覧ください)
今回は「家庭との両立」「指導者ライセンスに全級合格するまで」そして渡部 由記子の「1日レッスン」についてお話し下さいます。

家庭との両立

こうして、月に1回から2回の頻度で、愛知県から由記子先生のレッスンに通い始めました。

子育てをしながら挑戦する私に、「ピアノの先生はあふれるほどいるけど、お嬢様にとってお母様は貴女だけですから、まずお子さんを第一に考えられたら良いと思いますよ」とおっしゃってくださり、とても勇気づけられました。

家族には、協力を頼まなければ成り立たないことがたくさんありました。

始発で東京に行きますので、子供たちの朝の支度を夫に頼みました。学校から帰った子供の世話は、1時間離れたところに住む実家の母に来てもらうよう、お願いしました。

家族が快く承諾し、応援すると言ってくれたことで、何が何でも、全級取得するぞ!との覚悟が決まりました。

指導者ライセンス

指導者ライセンスに向けたレッスンは、とても細かく、1小節がなかなか前に進まないほどでしたが、初めて、「響き」とか「バランス」といったものを教えていただき、7時間の「1日レッスン」が、あっという間だったのを覚えています。

大人に対して、これほどまでしっかり教えてくださり、私の未来を考えて話をしてくださるなんて…と、とても感動いたしました。

由記子先生は、ご自分の中に膨大な事典をお持ちの印象でした。

音型による暗黙のルール、楽譜の見方など、初めて知ることばかりでした。

1音から次の1音に移るのに、こんなにも考え、イメージすることがあるのかと、自分の無知さを思い知ると同時に、これから開けてくる「知の泉」の深さに、とてもワクワクいたしました。

またレッスンを通じて、1音すらもおろそかにせず、響きを追求する世界があることを知りました。

そのような視点を持つことを知らずにピアノに向き合ってきた時代と、そのような視点を獲得した今では、見える世界が違います。

古い世界から新しい世界へ、自分自身の視点や気持ちの変化を体験できたことが、いま生徒を教えるうえで、とても役立っています。


指導者ライセンスは、その当時、1年に1度、東京会場のみで試験が行われていましたので、受検にかなりのプレッシャーを感じていました。

また、指導実技も合否判定で、悔しい思いも沢山いたしました。しかし、学ぶことの楽しさを実感できる、とても充実した日々でもありました。

その時の試行錯誤が、今、さまざまなお子さんに対する接し方の基盤となっていると感じています。

時には前に進めず、落ち込む私を、由記子先生はいつも励まして下さいました。

先生がおっしゃった、「合格するまで、諦めなければいいのです」という言葉は、ポジティブな力を持って、私に進む勇気を下さいました。

1日レッスン

1日レッスンは、新幹線で通う私の都合に合わせて、通常は9時からのところ、9:45から始めてくださいました。

まずは、その日にレッスンする曲を聴いていただきます。午前中は、すぐに直すべき点の、概要をざっとレッスンすることで終わってしまいます。

ヨーロッパの家具に囲まれた素敵なレッスン室は、防音設備が施され、スタンウェイの響きがとても心地良く、「いつかこんなレッスン室でレッスンがしたい」という憧れも抱かせてくれました。

お昼の食事もご一緒してくださいます。

いつも私のリクエストに合わせて、おいしいお店に連れて行って下さるのですが、その際にも色々な話をさせていただきました。

由記子先生との会話の全てが、レッスンでした。とくに「今後、どのようになりたいか」という点は、何度も考え、お話させていただきました。

ピアノに向かっている以外の時間も、ピアノ指導者としてのありよう、教室の運営方針を考え、学ばせていただき、そのすべてが貴重な時間でした。それは12年後の今も、同じです。

【次回は、「音へのこだわり」「愛の鞭」などについてお話し下さいます。】

渡部 由記子の一日レッスンについては、こちらのページをご覧ください。また、こちらの書籍でもご説明しております。

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