ピティナ・ピアノコンペティションで指導者賞を受賞なさった、愛知県の大神 薫先生から、体験記をいただきました。
大神先生は、国立の三重大学を卒業されています。「一般大卒なので、指導のプロにはなれないと思っていた」と仰る大神先生ですが、私が講座でお話しした「誰にでも可能性がある」という言葉に共感し、愛知県からレッスンに通われるようになりました。
そして前年に続き、2018年も指導者賞を受賞なさいました。
その大神先生と渡部 由記子の二人三脚で指導させていただいた海原 崇史くん(小5)は、小学6年生以下が受けるC級に挑戦し、みごと全国決勝大会でベスト賞を受賞なさいました。
2018年に入って、海原くんが中国地方からから岐阜県に引っ越されたのを機に、大神先生をご紹介しました。海原くんが渡部 由記子のレッスンを受けにいらっしゃる際、毎回、大神先生も一緒にレッスンに通われました。
海原 崇史君のコンペレッスンに同行して、感じたこと学んだこと
ピティナ・ピアノコンペティションが始まり、崇史君が7日~10日おきに由記子先生のレッスンを受ける際、私も同行させていただきました。
由記子先生から2月にお電話をいただいた時は、本当にびっくりで、その責任の重さを考えると、すぐにはお返事できませんでした。
いま、全国ベスト賞に輝いた崇史くんを見ていて、あの時、任せていただけて本当に幸せだったと痛感しております。
一番大変だったのは、時間のやりくりです。地元にも、12組のコンペ参加者がいましたので、その生徒さんたちのフォロー、行えなくなったレッスンの振替など、1日24時間では、とても足りないと感じる毎日でした。
しかし、半年を通じて得たものは計り知れません。
ゴール設定
まずは、コンペティション準備期間である、半年間のタイムスケジュールに感服しました。由記子先生の頭の中には、「どの時点で、どこまでの完成度が欲しいのか」という明確なビジョンがあり、それを一週間ごとの達成可能な目標に落とし込んで、導いて下さいました。振り返ってみて、そのことが良く分かりました。
ホール練習
ホール練習の目的と意義も学びました。歩き方、お辞儀の仕方、保護者が行うペダル装着の手順など、レッスンではなかなかできないけれど、本番ではとても大切なことを、生徒と保護者の方にしっかり伝えることを学びました。また、ホールでしかできない、響きのレッスンの重要性を今まで以上に実感いたしました。
主体性を引き出すレッスン
「ここはどうしたい?」そうするには「どう弾けばいい?」と、常に生徒に考えさせて、具体的に言葉にさせることの重要性も学びました。生徒が自分で考えることで、音が変わってくるのを実感しました。
とくに、全国大会に向けて仕上げていく過程では、より深く音を追及していく必要があります。その深みは、指導者に言われたとおりに弾けば良いという次元ではありません。本人が内面から出さなければ、出ない域に達します。由記子先生による、その高みへの導き方は、とても真似できるものではありませんが、本当に多くを学びました。
生徒との向き合い方
「生徒さんが質問に答えられなければ、1ミリもそこから進まない」という姿勢を学びました。つい、時間を気にして先に答えを言ってしまいがちですが、生徒が自分で答えを出すか、「わからない」「忘れた」と言うまでレッスンを進めない姿勢は、生徒本人が自分の足りないところを認め、新しいことをきちんと受け入れることにつながるのだと確信しました。
さらに、ここぞという肝心なことは、生徒本人ではなく、お父様、お母様にむかって、はっきりと丁寧に伝えるということ。親に責任を持っていただくということは、コンペを勝ち抜いていくうえでとても大切なことだと、改めて感じました。
また、決して一方的ではなく、必ず「大神先生は、どう思われますか?」と聞いてくださることにも、とても感謝いたしました。そして、私の申しあげる些細な点にも真摯に耳を傾けてくださり、問題を先延ばしにしない姿勢を学びました。
私に課されたミッションは、レッスンで教えていただいた膨大な課題の山を、次のレッスンまでにクリアしてくことでした。「次のレッスンで、『前回も言いましたよ』と指摘されることが決して無いように」と心に誓い、崇史くんの地元でのレッスンを進めました。実際に、毎回の課題をクリアできたことは、私にとっても自信にもなりました。
冒頭にも書きましたが、この半年は時間のやりくりに苦労しました。端から見ると大変そうに見えたかも知れません。けれども、レッスンごとに深く学び、大きく進歩していることを実感していましたので、苦労よりも充実感や喜びが大きかったと言えます。
大神 薫
体験記を下さった大神先生のホームページは、こちらです。